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大防法・石綿則の改正によりアスベストレベル3含有建材も規制強化!

大防法・石綿則改正に関するマニュアルの解説⑨

4.建築物等の解体等における飛散防止対策(続き)

 

石綿含有成形板等の除去作業における留意事項

 

破砕の原則

 

石綿含有成形板等は、種類・形状も多様で一部を除き見掛け密度が概ね0.5g/cm3 以上の硬い材料がほとんどであり、通常そのままの状態では石綿繊維が飛散するものではありません。

しかし、切断や破砕により石綿等の粉じんが発散することから、出来る限り切断や破砕等を行わないよう、原形のまま取り外すことが原則です

一方、石綿含有成形板等を原形のまま取り外すことが技術上著しく困難な場合は、湿潤化や隔離養生(負圧不要)を行いながら除去を行う必要があります。

技術上著しく困難な場合とは、石綿含有成形板等や固定具が劣化している場合、当該材料が下地材等と接着材で固定されており、切断等を行わずに除去することが困難な場合や、当該材料が大きく切断等を行わずに手作業で取り外すことが困難な場合等、物理的に困難な場合や、除去する石綿含有成形板等や作業場の状況等によって切断等せざるを得ない場合をいいます。

原形のまま取り外すことが困難であり、バール等による破砕や電動工具等による切断を行う際は、十分に散水等すると共に、必要に応じて隔離養生(負圧不要)、養生及び高性能真空掃除機等で粉じんを吸引することが必要です。

ただし、けい酸カルシウム板第1種を切断等により除去する場合は、散水等に加えて隔離養生(負圧不要)も必要となります。

原形のまま取り外す場合においても、取り外しに当たって建材の大きな割れや破損による石綿繊維の飛散が想定される場合は、必要に応じて湿潤化や隔離養生(負圧不要)、局所集じん機の使用等の措置を講ずることが望ましい。

原形のまま取り外した材料は、切断や破砕は行わず、原形のまま運搬し廃棄する必要があります。

除去時にやむを得ず切断等をした場合も、それ以上の切断等は行わず、そのまま運搬し、廃棄する。

大防法・石綿則改正に関するマニュアルの解説⑧

4.建築物等の解体等における飛散防止対策(続き)

 

石綿含有成形板等の除去作業手順

 

石綿含有成形板等を原形のまま取り外して除去する場合の作業手順を下図に示します。(ちょっと見にくいですね)

 

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上図の黄色いマーカーの部分が、解体後の廃棄物の処理方法ですが、まだ最終的な調整がついていないように思われます。

大防法・石綿則改正に関するマニュアルの解説⑦

4.建築物等の解体等における飛散防止対策(続き)

 

②大防法及び石綿則における石綿含有成形板等の除去に係る措置

 

石綿含有成形板等の除去作業においては、新たに大防法における作業基準の遵守及び石綿則による除去に係る措置が求められています。

石綿含有成形板等を除去する際は、原則として切断等を行わず、原形のまま取り外す必要があります

 

原形のまま取り外すとは、ボルトや釘等を撤去し、手作業で取り外すことです。

ただし、現場の状況等により原形のまま取り外すことが困難で、切断等を伴う除去を行う場合は、湿潤化を行った上で除去を行います。

この場合の湿潤化は、作業前に散水等により対象となる材料を一度湿潤な状態にすることだけではなく、切断面等への散水等の措置を講じながら作業を行うことにより、湿潤な状態を保つ必要があります。

 

現場の状況等により、湿潤化を行うことが著しく困難な場合は、十分な集じん性能を有する電動工具を使用することや隔離養生(負圧不要)を行うことにより、飛散防止措置を実施することが必要です。

 

石綿含有成形板等のうち、けい酸カルシウム板第1種については、他の成形板等に比べ破砕時の石綿繊維の飛散性が高いことが確認されていることから、切断等を伴う作業においては作業前及び作業中の湿潤化に加えて隔離養生(負圧不要)が求められます。

 

けい酸カルシウム板は第1種と第2種の2種類に分類され、主にかさ比重(内部に空隙をもつ固体の比重)によって分けられています。

けい酸カルシウム板第1種は石綿含有成形板等に、けい酸カルシウム板第2種は石綿含有保温材等に区分されるため、適用される作業基準が異なることに注意が必要です。

大防法・石綿則改正に関するマニュアルの解説⑥

3.用語の定義(略)

4.建築物等の解体等における飛散防止対策

石綿含有成形板等の除去における飛散及び漏えい防止の考え方

 石綿含有成形板等(石綿含有成形板及び工作物に使われている石綿含有建材・製品)は、建築物等の解体等工事時の石綿除去等作業において、適切な飛散防止措置が行われない場合には、作業現場周辺の大気中に石綿が飛散するおそれがあることから、令和2(2020)年5月の大防法の改正(令和3(2021)年4月施行)により特定建築材料に加えられ、同法に基づく周辺環境への石綿飛散防止方策の実施が必要となりました。

 また、令和2(2020)年7月の石綿則の改正においても同様に石綿含有成形板等の除去に係る措置が定められ、令和2(2020)年10月に一足先に施行されました。

その他廃棄物処理法等による石綿の飛散防止対策を遵守する必要があります。

 石綿含有成形板等に係る具体的な措置としては、建築物等の解体等時には石綿含有建材の有無を調べる事前調査において石綿含有成形板等についても調査しなければならなくなりました。

 石綿を0.1重量%超えて含有する場合は、石綿含有成形板等として除去を行い、廃棄物処理法に基づいて〇〇として適正に処理する必要があります。(〇〇は暫定の意味)

 石綿含有成形板等の解体等工事における大防法による作業の規制基準として、作業計画書の作成、作業基準の遵守、各種掲示・表示、作業完了の確認、作業状況の記録・保存、事業発注者への説明等があります。

 なお、大防法第18条の17及び石綿則第5条に基づく作業の実施の届出は不要ですが、自治体によっては条例等に基づき届出が必要な場合があるため、作業に際しては事前の確認が必要です。

 また石綿則による作業に係る規制事項として、作業計画書の作成及び作業者への周知、立入禁止、石綿作業主任者の選任、保護具の使用、各種掲示・表示(一部は安衛則、通達)、計画された作業手順の遵守、記録の作成・保存等があり、作業者は全員が石綿特別教育(石綿使用建築物等解体等業務特別教育)を受講している必要があります。

 また、立入禁止措置については、作業場を離れる時や帰宅する時においても作業場へ関係者以外が立ち入らないように封鎖をします。

 石綿則では、なかなか厳しい措置が規定されていますね。

大防法・石綿則改正に関するマニュアルの解説⑤

2.関係法令の解説(続き)

 

労働安全衛生法(安衛法)及び石綿障害予防規則(石綿則)

 

安衛法は、職場における労働者の安全と健康の確保及び快適な職場環境の形成の促進を目的とする法律です。

石綿則は、石綿による健康障害予防対策の一層の推進のため、建築物等の解体等作業における石綿ばく露防止対策等についての基準を示した厚生労働省令(これも法律の一種)です。

石綿による健康障害の予防については、従来、特定化学物質等障害予防規則に定められていましたが、増加する建築物等の解体等の作業における石綿による健康障害の予防対策の推進を一層図るため、平成17(2005)年7月1日より分離され、単独の規則として制定されました。

この石綿則においても、アスベスト除去工事の作業基準が定められていますが、ここでも、今回特定建築材料になったアスベストレベル3の作業基準を記します。

 

  • 成形された材料であって石綿等が使用されているもの(石綿含有成形品)を建築物、工作物又は船舶から除去する作業においては、切断等以外の方により当該作業を実施しなければならない。
    ただし、切断等以外の方法により当該作業を実施することが技術上困難なときは、この限りでない。

 

先の大防法では「切断、破砕等することなくそのまま建築物等から取り外すことで当該建築材料を除去する」となっていました。

表現は違っていますが、内容はまったく同じですね。

 

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

 

建築物の解体等から排出される石綿含有産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物に指定された廃石綿等について、その分別、保管、収集、運搬、処分等を適正に行うため必要な処理基準等が定められています。

※この箇所は、今回のマニュアルでは、黄色のマーカーがなされています。【暫定版】ということで、今後廃棄物処理法との調整がなされるものと思います。

今回、何故、廃棄に関してマニュアルが間に合わなかったのか?ということは非常に興味深いですね。理由が判明次第、当ブログでお伝えしたいと思います。

 

④建設リサイクル法

 

事前に吹付け石綿その他の対象建築物等に用いられた特定建設資材に付着したもの(以下「付着物」という。)の有無の調査を行い、その調査結果に基づき分別解体等の計画を作成し、付着物の除去その他の工事着手前における特定建設資材に係る分別解体等の適正な実施を確保するための措置を講ずることが定められています。

 

建築基準法

 

建築基準法では、吹付け石綿石綿含有吹付けロックウール(以下「吹付け石綿等」という。)の建築物及び建築基準法に定める工作物への使用が禁止されています。

それに伴い、吹付け石綿等が使用されている建物は既存不適格建築物(注)となり、改修時等の措置が義務付けられています。

また、「封じ込め」、「囲い込み」の基準が告示で明確に示されています。

 

(注)建築基準法では、既存の適法な建築物が法令の改正等により違反建築物とならないよう、新たな規定の施行時又は都市計画変更等による新たな規定の適用時に現に存する又は工事中の建築物については、新たに施行又は適用された規定のうち適合していないものについては適用を除外することとし、原則として、増改築等を実施する機会に当該規定に適合させることとしています。

この新たな規定の施行又は適用により、不適合になった既存建築物を既存不適格建築物といいます。

大防法・石綿則改正に関するマニュアルの解説④

2.関係法令の解説

 

アスベスト関係の法律は様々なものがあるので、この機会に簡単に整理しておきましょう。

 

大気汚染防止法(大防法)

大防法においては、石綿の排出及び飛散の抑制を図るため、平成元(1989)年の大防法の改正から規制が始まりました。

大防法の規制対象となる材料のことを「特定建築材料」と呼びますが、特定建築材料は、特定粉じんを周辺環境へ飛散させるおそれのあるものであり、石綿の場合は、その生産量、使用量等も考慮して、最も石綿飛散性の高いものとして、当初、吹付け石綿が指定されました。

 

その後、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材が追加されました。

 

さらに、平成25(2013)年の法改正から5年が経過し、法の施行状況を検討した結果、散性が相対的に低いことから、これまで規制対象ではなかった石綿含有成形板等(いわゆるレベル3建材)についても、不適切な除去作業を行えば石綿が飛散するおそれがあることが判明したため、昨年(令和2年)、法の規制対象に加えられました

現在、特定建築材料に該当するとされている建築材料は以下の通りです。

 

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特定建築材料毎に解体工事の作業基準が細かく定められていますが、ここでは法改正によって規制対象になったアスベストレベル3の作業基準を解説します。

 

  • 切断、破砕等することなくそのまま建築物等から取り外すことで当該建築材料を除去する。

 

  • ただし、そのまま建築物等から取り外すことが技術上著しく困難等なときは、除去する特定建築材料を薬液等により湿潤化する。

 

  • この場合において、除去する特定建築材料が石綿含有けい酸カルシウム板第1種であるときは、当該特定建築材料の薬液等による湿潤化に加え、当該特定建築材料の除去を行う部分の周辺を事前に養生する。

 

  • また、当該特定建築材料の除去後、作業場内の清掃その他の特定粉じんの処理を行う(養生を行ったときは、養生を解くに当たって行う)。

 

  • 「切断、破砕等することなくそのまま建築物等から取り外す」とは、固定具等を取り外すこと、母材等と一体として取り外すこと等により、特定建築材料を切断、破砕等せずに建築物等から除去することをいう。

 

  • そのまま建築物等から取り外すことが「技術上著しく困難なとき」とは、特定建築材料や固定具が劣化している場合、特定建築材料の大きさ、重量、施工箇所等によって取り外しが物理的に困難な場合など、除去する特定建築材料や作業場の状況等によって切断、破砕等せざるを得ない場合をいう。

大防法・石綿則改正に関するマニュアルの解説③

石綿健康被害

石綿健康被害には、じん肺石綿肺)、肺がん、悪性中皮腫、良性石綿胸水(胸膜炎)、びまん性胸膜肥厚等があります。

このうち悪性中皮腫は極めて予後不良な悪性がんです。

石綿ばく露から20~50年の長い潜伏期間の後に発症するため、我が国では下表に示すように1990年代以降急激な増加傾向にあり、最近では毎年1500人に迫る方々が亡くなっています。

 

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中皮腫発生の8割程度は、石綿に起因するといわれています。

石綿の種類によっても発生率に差があることも知られており、クロシドライトの危険性が最も高く、アモサイトがこれに次ぎ、クリソタイルはクロシドライト、アモサイトよりも危険性が低いといわれています。

中皮腫の発症と石綿のばく露量の反応関係に関する信頼のおけるデータはありませんが、石綿による肺がん発症に比べて中皮腫の発症はかなり低濃度の石綿ばく露でも生じることが知られています

石綿の輸入量のピークが1970年から1990年であったこと、潜伏期間が20~50年であることを考えた場合、2020年~2040年までは、この被害者増加の傾向は続くのではないかと考えられます。

二度とアスベストによる被害を出してはならない!という思いを強くさせるグラフですね。