先にお伝えした通り、3月10日に、「大気汚染防止法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
これまで、この法律案の背景にある「今後の石綿飛散防止の在り方について(答申案)」の解説を行ってきましたが、より理解を深めるために、答申案作成過程で提出されたパブリックコメントの「意見の概要」と「意見に対する考え方」を、簡単にご紹介したいと思います。
パブリックコメント(意見募集)は令和元年11月14日から12月13日の約1ケ月間に亘って行われました。
意見提出総数は494通で、内訳は下記の通りでした。
・地方公共団体:20通
・NPO等:24通
・民間企業:47通
・業界団体:7通
・個人:378通
・匿名:18通
本日は「Ⅲ各論1.特定建築材料以外の石綿含有建材の除去等作業の際の石綿飛散防止」です。
【作業場所近傍のばく露に係る規制は厚生労働省の所管である。特定建築材料以外の石綿含有建材を規制するのであれば、作業場近傍ではなく敷地境界において石綿が飛散しているというデータをお示しいただきたい】
※作業員の健康に対する規制は厚労省の所管であるが、環境省所管の大気汚染防止法による規制を強化する以上、解体等の現場だけでなく敷地境界つまり現場以外の範囲まで被害が及ぶことが立証されなければならないのでは?
しかも、特定建築材料以外の石綿含有建材(レベル3)は、これまでは規制の対象外だったんじゃないの?
今回規制強化するならば、その根拠をデータを示して下さい!との意見です。
この意見に対する考え方は?
⇒建築物等と敷地境界が隣接する解体等工事の現場もあると考えられ、作業場所からの石綿の飛散が、敷地境界の外にも及ぶおそれがあるため、作業場所近傍における測定結果により検討を進めたところです。
環境省による作業現場近傍の飛散の実態調査によると、特定建築材料以外の石綿含有建材であっても、適切な飛散防止措置が行われない場合は石綿が飛散することが確認されており、これにより、作業現場周辺の大気中に石綿が飛散する可能性が明らかになったものと考えています。 現在はマニュアル等において飛散防止対策が周知されているところですが、不適切な除去等作業の事例も確認されており、マニュアル等に基づく指導では強制力に一定の限界があります。そのため、特定建築材料以外の石綿含有建材の除去等作業における石綿の飛散を防止するため、これを大気汚染防止法の規制の対象とすべきと考えています。 これにより、事前調査や作業基準遵守義務の対象となるところ、作業基準については、特定建築材料以外の石綿建築材料の性質等を踏まえた内容を今後、検討する必要があります。また、都道府県等による立入検査等によって作業基準の遵守を担保することとしており、立入検査等の際に除去等作業の内容を確認できるよう、作業計画を策定することとすべきと考えています。
ここでは具体的にデータは示されていませんが、環境省で調査した結果、特定建築物以外の建材でも、実態調査の結果、現場だけでなくその周りにも飛散しているということが分かってきた。
そのために、これまではマニュアル等で指導してきたが、不適切な除去等作業の事例が頻繁に発生しており、もはや法規制をしないと被害が拡大してしまう。
ということです。
そのために、【特定建築材料以外の石綿含有建材除去等作業時に効果的な対応を講じるためには、まずは詳細・明確かつ実効ある作業基準を規定することが必要不可欠である。その上で、除去等作業者に対し、作業開始前に適切な作業計画の策定を義務付けることが重要である】という意見も提出されています。
要するに、特定建築材料以外の石綿含有建材(レベル3)についても、レベル1、2と同じように法規制をしないと石綿被害が拡大してしまうという共通認識に立ったということですね。