公益社団法人全国解体工事業団体連合会の第11回(通算48回)の通常総会が先週6月10日(金曜日)、札幌市内のホテルで開催されました。
全解工連は全国に約1,750社の会員企業を有しており、賛助会員はインターアクションを含めて33社の大きな団体です。
総会は写真の通り盛大に実施されました。
会長の井上尚氏の挨拶により、解体業界が置かれている状況を理解することができました。
平成28年6月1日から、従来の建設業法では「とび・土工工事業」に含まれている 「工作物の解体」を独立させ、建設業許可に係る29番目の業種区分として、新たに「解体工事業」が追加されました。
井上会長のお話の中で、そこまでに至る業界の苦労の一端を伺うことができました。
現在、連合会で最も力を入れているのは、解体工事施工技士の資格の普及です。
解体工事施工技士試験は、解体工事業に係る登録等に関する省令(国土交通省令)第七条第三号の国土交通大臣登録試験です。
全解工連がこの資格制度を創設した背景には次のような、解体工事業を取り巻く課題がありました。(以下、全解工連のホームページより参照させて頂きました)
1.解体工事の増加
我が国における建築物の耐用年数は、構造その他の条件にもよりますが一般的には30~50年といわれています。したがって、昭和30年から昭和48年にかけての高度経済成長期以降大量にストックされた建築物等が既に更新期に入っています。
現在は建設工事全体で見れば工事量は減少傾向にありますが、解体工事は今後20~30年程度は増加することはあっても減少しないと見込まれています。
その後も、国土が狭小な我が国においては、不要な建築物等を放置することはありえず、除去工事、建替工事あるいはリニューアル工事を含め、将来的に解体工事が行われなくなることは考えられません。
2.解体対象物の大型化、複雑化
解体対象物は、以前は木(W)造戸建住宅がほとんどでしたが、現在は鉄筋コンクリー卜(RC)造、鉄骨鉄筋コンクリー卜(SRC)造、鉄骨(S)造あるいはそれらの複合した建築物など、大型で複雑な建築物の解体工事が増加しています。原子力発電所、高層ビルなどの解体工事もすでに始まっています。解体工事技術も高度なものが求められるようになってきました。
3.解体工事に関する災害の増加
全産業そして建設産業においても近年、労働災害は減少しています。
しかしながら解体工事に関しては減少するどころかむしろ増加しているともいわれています。解体工事に限定した正確な統計はありませんが、例えば『建設業安全衛生年鑑』(建設業労働災害防止協会)によれば、建設産業全体の死亡災害のうち解体工事関係のものが約14%を占めています(平成29年版) 。
工事量の増加、対象物の大型化等に加えて、分別解体の徹底を図るため手作業及び高所作業が増加しているので、この傾向は続くものと思われます。また、解体工事中のビルの外壁が敷地外に崩落し通行者等の第三者が災害に巻き込まれる公衆災害も少なからず発生しています。大型建築物等の解体工事が増加しているので、今後も大規模災害発生の危険性が指摘されており、適切な対応が必要となっています。
4.リサイクルの促進
地球資源の枯渇を目前に控え、世界的に資源を有効に利用する資源循環型社会の構築が推進されています。特に資源の乏しい我が国においては急務とされています。
関係法令等も既にかなり整備されてきたところです。特に建設産業は資源を大量に消費するため、果たす役割も行動後の効果も大きく、廃棄物を大量に排出する解体工事はその意味では重要な位置にあります。
解体工事から発生する廃棄物はリサイクルすれば、いわば都市に眠る資源です。一般国民、発注者はもちろん解体工事業者の意識向上と努力が求められているところです。
5.廃棄物の適正処理
我が国で排出される産業廃棄物の量は毎年約4億トン、そのうち約2割が建設産業から排出されています。これらの廃棄物はリサイクルが第一義ですが一部は埋立処分することが不可避です。しかしながら最終処分場は逼迫しており、処分費用も高騰しています。そのような理由もあって不法投棄が後を絶ちません。
不法投棄を防止するためには、まずは川上即ち解体工事現場で対策を講じることが必要です。解体工事現場には、分別解体及び廃棄物の適正処理まで意識の高い施工管理者が必要です。
6.有害物の適正処理
建築物等には多種類の建材が使用されてきましたが、その中には環境あるいは人間の健康に有害な物質も少なからず含まれています。石綿、PCB、フ口ン、ハ口ン、水銀、カドミウム、CCA処理木材などは代表的です。解体工事に際してはこれらの有害物を含む建材を適切に処理しなければなりません。解体工事の施工者には有害物に関する知識と施工管理能力が不可欠となっています。
7.解体工事業界のレベルアップ
解体工事の重要性についての認識が急速に高まるにしたがって、解体工事業界の人的及び技術的レベルも徐々に向上してきましたが、まだまだ十分ではありません。
将来に亘って社会の要請に応えるためにはさらなるレベルアップが必要です。
そのためには解体工事業界が自ら努力することが大前提ですが、それを支えるしくみ・制度、例えば公的な資格者制度等の整備が不可欠です。
8.解体工事業界の人材確保
少し前までの解体工事は職人の勘と経験に頼っていました。現在でもその比重は小さくありません。ところが現在、経験豊富な職人の引退により技術の伝承が途切れようとしています。若い有能な人材も所謂3K職場は敬遠しがちで、人材確保が大きな課題となっています。若い世代が自信と誇りをもって仕事ができる解体工事業界を築かなければなりません。人材確保のためには公的な資格の整備が是非必要です。
9.解体工事専門工事業の確立
平成26年に建設業法が改正されました。許可業種区分が見直され「解体工事業」が新設されました。新設は43年ぶりのことです。
このことは、解体工事業の認知度の向上、解体工事業従事者の職業意識の向上、解体工事施工技術の向上等、多くの良い影響をもたらすと考えています。
解体工事業の新設と同時にそれに対応する技術者制度も整備されました。
解体工事に特化した唯一の資格である解体工事施工技士資格が注目されており、なお一層の活用が期待されています。
10.国土交通省はじめ行政のご理解
以上のような現状及び将来に鑑み、平成5年当時の建設省には解体工事専門の資格制度が不可欠との認識を頂きました。当時の建設省と当連合会が協力し、平成5年に第1回解体工事施工技士試験を実施しました。国土交通省にはその後も、平成12年に成立した「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)において、この解体工事施工技士資格を登録業者の技術管理者資格として、現在は解体工事業許可業者の主任技術者資格としても活用していただいております。
一部の自治体等では解体工事施工技士の解体工事現場常駐を発注条件としていただいているところもあります。
長々と引用してしまいましたが、このような真摯な取り組みによって、解体工事業が名実ともに正式な建設業の一員として受け入れられることになると思われます。
総会後の懇親会には、数多くの国会議員や行政の担当部局も来賓として挨拶に訪れていました。
北海道知事(写真)、札幌市長もお見えになっていました。
インターアクションは総会会場に隣接する休憩室に展示ブースを設営し、アスベスト廃棄物の適正処理をサポートする製品を展示させて頂きました。