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大防法・石綿則の改正によりアスベストレベル3含有建材も規制強化!

『石の肺-僕のアスベスト履歴書』(佐伯一麦)を読む②

序章 国の指導で吹き付けた②

佐伯氏の知り合いの早津三良さんの話です。

「当時74歳になる早津氏は、現役時代は印刷工場の社長でした。

昔のことですから印刷を早く乾かすためにヒーターで熱していたそうです。

ということは火事が多い。

そのために消防署から幾度となく注意・指導を受けていたとのこと。

天井にアスベストを貼るように指導されました。

 

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1975年にアスベストの有害性がわかって吹き付けアスベストが禁止されたわけですが、アスベストそのものを使用禁止にするのではなく、管理して使用することになって、人工の鉱物繊維であるロックウール(岩綿)に、茶石綿や白石綿といったアスベストを約3%から30%混入させて吹き付けていたわけです。(中略)

剥き出しだから、落っこちてくるわけですよ。吹き付けてるけど。」

国もアスベストの害を理解していなかったわけですから、消防署も火事を出されては困るから、「アスベストを使え!」となったんでしょうね。

早津氏の印刷工場は平成2年に別の工業団地に移りました。

そのときにはアスベストに変わって珪カル板にかわっていました。

珪酸カルシウムの発泡スチロールの板みたいなものを張ればよくなりました。

新しい工場ではアスベストは使っておらず、グラスウールの断熱材を天井裏にいれていたそうです。

ですからアスベストの危険性は、その頃になると消防署でも分かっていたようですが、早津氏自身はそんな危険なものだなんて意識はありませんでした。

「当時は珪酸カルシウム板は、アスベストが含まれていないというふれこみでしたが、いまでは、じっさいは1994年までアスベスト含有のものが製造されており、含有率は、5~25%が多かったことがわかっています。」

 

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「ところで、早津さんの目から見ても、まだまだアスベストがそのままになっているところはあるのでしょうね。

―それはもう。散歩してると見つかるんですよ。

郵便局の隣の自動車学校の車庫にいっぱいついてましたよ。

半分外のガレージみたいなとこ。

あれもやらされたんでしょうなあ、そうしないと許可しない、ということで。

でもアスベストを、取るとなるとまた大変だと思うんですよ。

そのままになってましたね。完全な除去は難しいだろうね。」

火気を扱う印刷工場ということはありますが、かつてアスベストはどこにでもふんだんに使われていたのですから、早津さんと同じような経験をして不安に思っている人たちは多いでしょう。

ということで、序章を終え、いよいよ著者の佐伯氏の「アスベスト履歴書」を読んでいきます。