令和2年にアスベスト規制に関する法律が改正されました。
大気汚染防止法(大防法:環境省)と石綿障害予防規則(石綿則:厚生労働省)です。
それまで両法律の足並みが揃っていないことが指摘されていましたが、この改正により両法律足並み揃えて規制されることになりました。
この改正にさかのぼること4年前に、総務省から「アスベスト対策に関する行政評価・監視―飛散・ばく露防止対策を中心としてー結果に基づく勧告」が出されました。
それまでは、スレート板等のアスベストレベル3含有建材は「非飛散性」として、あたかも「飛散しない物」として取り扱われていましたが、この勧告で次のように指摘されました。(P33~)
この(注1)とは以下の内容です。
「被災地におけるアスベスト大気濃度調査(第13次モニタリング)結果について(平成27年10月16日時点)」(平成27年10月19日平成27年度第1回アスベスト大気 濃度調査検討会資料)によると、レベル3建材のみが使用されている作業現場付近で、レベル3建材を破砕・切断したことなどから、アスベスト繊維数濃度10本/Lが検出された事例が報告されている。
つまりスレート板などのレベル3も、解体に際して「破砕・切断」するとアスベストが飛散するということが、各地のモニタリングの結果確認されたということです。
しかし、大防法で規制しているのは、レベル1(吹付け)とレベル2(保温材等)のみでレベル3は規制対象外のままでした。
そのため、都道府県によってはレベル3を条令で規制している自治体がありました。
この勧告からようやく4年経って令和2年6月5日に公布された大防法の改正により、レベル3も含めアスベストを含むすべてのものが法律の規制対象となりました。
この改正により、作業場の労働者を保護するための法律である石綿則も改正され同じく令和2年7月1日に公布されました。
基本的に両法律とも施行は翌令和3年4月1日からでしたが、石綿則の方は令和2年10月1日より「石綿含有成形品に対する措置の強化(切断等の原則禁止)」が施行されました。
アスベストレベル3が含まれている建材は、下図の通り全アスベスト含有建材の
96.5%となっており、規制対象にレベル3を含むか否かで、その影響度合いが大きく違ってくることになります。
令和3年3月に厚労省と環境省の連名で公開された「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」は、本文だけでも262ページの本文と99ページの参考資料の計361ページという膨大なものでした。
このマニュアルの177ページに次の記載があります。
警察以外に逮捕権を持っているというのは意外です。
それだけ、労働関係法令は労働者の安全を守る強力な楯なんですね。
石綿則の改正のスケジュールは下表の通りです。
来月からスタートする「事前調査・分析調査を行う者の要件新設」つまり石綿調査者等の有資格者による事前調査の義務化によって一連の改正内容が網羅されます。
アスベスト規制がより強化されるのではと危惧されます。